寺田屋からの逃走ルート3

寺田屋の裏の車町の通りから、村上町の材木納屋までの逃走ルートを考えてみたい。

まず幕末時の地図を確認する。(但し地図は、京都府紀伊郡伏見役場が後に作成) 右端(東)に「御役屋敷」と表示して伏見奉行所がみえる。 過書町や村上町は材木商いが活発で、貯木場など木場があったが、実際には地図には描かれていないことに注意。

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拡大図

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明治5年当時の図

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伏見の町は多くが戊辰戦争で戦火にあったが、幕末時と町割りはほとんど変わらない。 寺田屋は十五区と書かれた場所にあった。 なお、過書を含む十一区は、町制発布前のこの頃は江崎権兵衛が副年寄副区長を務めていた。 材木納屋の南側一帯は、因州鳥取藩伏見屋敷があった場所で、材木納屋の辺りは大坂の蔵屋敷などと同じように藩の御用商人に藩邸の一部の地所を貸していた場所と思われる。(なお、タイトルを別にして別途記述するが、材木納屋は鳥取藩ではなく、紀州藩の敷地にあったと考えている。)

逃走ルートに関して、龍馬は、 「町に出て見礼バ人壱人もなし。是幸と五町斗りも走りしに、・・・・、つひに横町にそれ込ミて、御国の新堀の様なる処に行て町の水門よりはひ込ミ、其家の裏より材木の上に上り寝たるに」と書簡に書き、

慎蔵は、「走る途中一寺あり此囲を飛越んとするに近傍多数探索するの様子有之、甚た切迫に付路を変し走出て川端の材木の貯積を見付け其の架際に両人共密に忍込み」と日記に綴る。

逃走した当事者二人の言はこれだけで、あとは当時の状況から推測するしかない。 この中でポイントは、

①寺

②近傍多数探索するの様子有之

③路を変じ

④横町にそれ込ミて

⑤御国の新堀のような処

⑥町の水門

⑦川端の材木貯積

 

①寺 車町から村上町の間には、寺は3つある。

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見えにくいが、天保年間の伏見の絵図の一部分で、寺田屋のあたりから、材木小屋までが入っている。 真ん中より上に黄色く3つ並んでいるのが、東から西へ、西岸寺(下油掛町)、西教寺(周防町)、興禅寺(周防町)である。

龍馬たち二人は、車町の通りに出てから、道を奉行所のある東とは反対の西へ進んだはずだ。 この道は京橋町でぶつかり先は行き止まりなので、右に曲がり南北の道を薩摩藩伏見屋敷のある北側にとることになる。 するとすぐに、下油掛町と周防町の町境にぶつかり先は行き止まりになる。(ただし、町境に在る駿河屋本店で確認すると、北に延びる細い道はあったという。)

ここで、下油掛町と周防町の町境より奉行所に近い東側にある油掛地蔵で有名な西岸寺は外ずしてもよい。 従って、龍馬たちが囲いを飛び越えようとした寺は、西教寺か興禅寺のどちらかになる。

          西教寺

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         興禅寺

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幕末時の敷地と同じとすれば、興禅寺は通りに面して門があり、高さは分らないが塀は単に飛び越えるのは無理があるかもしれない。 西教寺は門が通りから後退していて、通りに面しては柵などの囲いがあったのだろうか。 飛び越えはしなかったが、慎蔵のいう寺は西教寺のようだ。

 

②近傍多数探索するの様子有之とは、

今逃げている道の先方の濠川に架かる阿波橋の周りを警戒している捕り方を見つけたのかもしれない。 そこで道を転じ、西教寺と下油架町の駿河屋本店との間に在ったという北に延びる細い道を逃げたのではないだろうか。

慎蔵のいう③「路を変じ」と龍馬のいう④「横町にそれ込ミて」は同じかもしれない。 この細い道は、途中に田んぼや大きな池などはあるがどうやら大手筋まで続いていたらしい。 (この道の周りは、明治になって大きく拡張され、駿河屋本店が終駅で北へ続く日本初の電気鉄道が通る道となる。) 明治41年の改正図

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明治28年2月開業の日本初の電気鉄道が描かれている。七条停車場からの終点駅は駿河屋本店の前にできていた。 下大手町と過書町との間の濠川にかかる大手橋はまだない。 材木納屋のあった辺りは川が入り込み、まだ木場があるのが分る。 龍馬と慎蔵二人は、この細い道を下大手町まで走り大手筋に達し、道を左に西に取る。その先に材木納屋がある。

⑤御国の新堀のような処 ⑥町の水門 ⑦川端の材木貯積 もともとこのあたりは池が多くあり、濠川と繋がっているところは、材木を蓄積し、濠川を利用して運ぶのに便利な木場として利用されていた。 従って、材木が流れないように、水門も設けられていた。 あくまでも一つの仮説にすぎないが、以上の逃走ルートをまとめると以下のようになる。

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絵は三吉慎蔵と坂本龍馬です

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