本能寺の変遷

一昨日、本能寺の変遷の跡を訪ねてきた 本能寺は、日隆上人によって応永22年（1415)に創建されたが、その後、法華宗内の対立や、応仁の乱・本能寺の変などの戦乱、秀吉の都市計画によって５回、場所を変えている。 元々の寺号は「本応寺」で、３回目の再興のときから「本能寺」となる。 日隆上人自身が関わったのは最初の３回で、信長が自刃したときの本能寺は４回目の場所。 ①1415年 日隆上人が油小路高辻と五条坊門の間に本応寺を建立（第１の建立） 　 1418年 妙本寺五世・月明との宗内対立の結果、妙本寺衆徒により破却される

②1429年 日隆上人が小袖屋宗句の援助により内野に建立（第２の建立） ③1433年 日隆上人が如意王丸を願主に六角大宮に本能寺を建立（第３の建立） 　 1536年 天文法乱にて延暦寺の焼き討ちに遭う

④1545年 日承上人が四条西洞院に建立（第４の建立） 　 1582年 本能寺の変にて焼失。信長自害 ⑤1592年 秀吉の命にて現在地の寺町御池に移転、日衍聖人が建立（第５の建立） 　 1788年 天明大火で焼失

⑥1840年 日恩上人が再建（第６の建立） 　 1864年 蛤御門の変にて焼失 　 1872年 上地令にて寺領が半減する ⑦1928年 現在の本堂再建（第７の建立） 本能寺を創建した日隆上人は、高祖母小杉としの実家・小杉家と縁続きになる。 小杉家初代の小杉伊右衛門尚芳は、桃井三郎四朗直宣の嫡子であるが、 その６代前に、越中守護でもあった桃井播磨守直常がいる。 日隆上人は桃井直常の曾孫で、浅井城（射水郡大門町嶋）主だった桃井右馬頭直儀（桃井直常の子直和の子）と斯波義将女の益子との間に、元中２年（1385)10月14日に浅井郷で生まれ、寛正5年（1464)2月25日に寂している。 10歳で郷里の遠成寺に入り、18歳のときに上洛して妙本寺（現妙顕寺）の日霽(にっせい)に師事し、父桃井直儀の弟で日隆の叔父にあたる日存・日道の学舎に入って慶林房日立と称した。 日隆に改めたのは永享5年（1433)になる。 当時の法華宗はすっかり貴族化してしまっていて、 妙本寺の跡を継いだ公家出身の月明（がつみょう）もその例にもれず、権力に迎合し寺の行儀は乱れ、日蓮の教えも曲げられてしまう状態だった。 そこで日隆上人は、同志とともに改革運動を起こし、再三にわたり月明を折伏したが聞き入れらなかったため、日存・日道とともに妙本寺を去り、宗学の研鑚に務め、応永22年（1415)に本能寺（この時は本応寺と称す）を建立し、法華宗の一派を立て、法華宗本門流および本門法華宗の祖となる。 ①応永22年（1415)に創建した「本応寺」は、 寺地は北を五条坊門小路（現・仏光寺通）、南を高辻小路、東を西洞院大路、西を油小路に囲まれた地。今この場所には当時の痕跡は何もなく、この区画には寺は一つもない。 　　　　第１の創建場所、西洞院通高辻上る方面を望む

ただ、道元禅師が建長5年（1253年）に 病により、俗弟子覚念の屋敷（京都高辻西洞院）で没したことを示す後世の碑が建つのみである。

この本応寺は応永25年（1418）に月明により破却されたため、日隆上人は京都を離れ、応永27年（1420)に河内三井（本厳寺）と尼崎（本興寺）を創建している。 ②日隆上人は、永享元年（1429年）に帰洛して大檀那・小袖屋宗句（山本宗句）の援助により、千本極楽付近の内野（大内裏跡）の町端に「本応寺」を再建する。 この時の寺地は、残念ながら明確ではない。 ③そして、1433年（永享5年）檀那・如意王丸なる人物から六角大宮の西、四条坊門の北に広大な土地の寄進を受け再建し、寺号を「本能寺」と改めた。寺地は、北を六角小路、南は四条坊門(現在の蛸薬師通）、東を大宮大路、西を櫛笥小路（現在の神泉苑通）の敷地を有した。 　　　　第３の建立場所、神泉苑通六角下る方面を望む

　　　　この近くには、六角獄舎があった

　　六角獄舎跡から、「神泉苑通六角下る」を望む。意外と近い

今はこの地に4つの宗派の異なる寺があるが、本能寺とは関係がない。 たとえばその一つ、善想寺の沿革によると、もともと四条後院の御殿があったが、元弘・建武の京都の戦い（1331～4年）で廃墟となり、南北朝時代、応仁の乱などにより京都は荒廃し、元亀年間（1570年頃）までは荒涼たる荒地だったという。 ただ、この善想寺が建立される前に、より大きな寺地で本能寺があったことになる。 しかしこの寺も、天文5年（1536)の天文法華の乱により、延暦寺の焼き討ちに遭って壊滅する。 ④天文14年(1545)に、各地に離散していた法華宗の帰洛が許され、北は六角通(三条通との説もある）、南は四条坊門通（現在の蛸薬師通）、東は西洞院通、西を油小路通に囲まれた地域に再興される。 　　　　　第４の建立場所、西洞院通蛸薬師上る方面を望む

この本能寺は天正期に信長の定宿として使われ、同10年6月2日、本能寺の変によって焼亡する。 なお、今現在、蛸薬師通の南側に、「本能寺跡」碑、「此附近　本能寺址」碑が建立されているが、本能寺は蛸薬師通北側なので、碑の建立場所は今となっては間違いとなる。

⑤変後は同地にて再建が試みられるが、秀吉の都市計画に従って、寺町御池に移され、焼失・再建を経て、現在に至る。 参考：「本能寺の変遷」　（京都市埋蔵文化財研究所） 　　　　「本能寺の変」を調査する　（京都市埋蔵文化財研究所） 　　　　「南北朝の動乱と桃井直常」（富山県立富山高校） 「 人気ｂｌｏｇランキング 」　 に参加しました。よろしければ押してくださいませ。
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