海王丸航海19日目 2010/04/24(土) 荒天に堪える
昨夜より荒天、甲板の出入りは禁止となり操舵は甲板から艦橋に替わっている。
本日は更に荒れがひどくなる。荒天に(よって甲板に出れないのを)堪える。
小生の乗船は、咸臨丸の航跡を辿ることが目的の一つで、そこでの体験を通じて先祖を偲びたいと思っている。
海王丸の船長として当然のことだが、安全サイドを選択するため、残念ながら有名な鈴藤の咸臨丸難航図のような場面にはなかなか出くわさない。北緯43度近辺まで北上すれば同じ様な体験が出来るのではないかと思っている。
昨日今日は北緯41度近くまで北上し荒天の中にいる。
一等航海士より、正井さんの望み通りになってきましてね、との言があったが、ただ、甲板の出入りができないとなると・・・・・
天気 雨、荒天
正午時点では、
前日正午からの(直航進路082、距離204マイル、東京からの距離3882,残航1089、平均7.44ノット)、
風向S/W、風力7、ヤード(帆桁)右舷開き、
天候雨、気温10.9、海水温度10.5、気圧1010.1、海面状態荒い
船の位置 北緯40度57分、西経145度15分
時刻改正21分(累計-18時間42分)
0611 船内時間6時11分のモニターでは風速30ノット、波3m、船速10ノット、気圧1012ヘストパスカル
0640 朝別科 第1教室
「傾斜もあり、今後益々揺れる状況になるので、掃除では床は濡らさないこと」との指示があった。
床掃除は、モップを濡らし手でいつもより固く絞り床をふく。余り濡らすとすぐに乾かないので、注意して行う。
0830 課業始め
荒天のため、登艢訓練、操練とも中止のため、自主研修となる。荒天の場合の自習研修は、教室は実習生が占めているため、居室での勉強になる。
小生は、溜まった写真や映像の整理、全く別テーマのパワーポイント作業に費やした。
1200 現在の気象状況と最新の今後の気象予想に鑑み、船長により大きな決断がなされた。
今後の気象予想には24時間、72時間、96時間などの気象予想図がある。
これはちょっと古い22日発行の25日正午までの気象予想図
このまま推移すれば波高5m・6m~9mにもなる。
船長判断により、現在の荒天状況を脱するため一旦南に向かい低気圧より離れる。desire course 130度、北緯36度を目指す。
小生の行きたい方向とは逆の方向へ向かう。
夕方 傾斜が可成りきつい。30度になることが多い。
船体傾斜については、「大型帆船の展帆基準について」前海王丸船長雨宮氏の論文を読んだことがある。
いわく、
①生活限界傾斜角は、10度
・船内生活全般や給食活作業に支障をきたす生活限界傾斜角は、経験的に10度
②操帆限界傾斜角は、15度
・操帆作業に支障をきたす操帆限界傾斜角は、経験的に判断して、15度
③舷端水没角は、30度
・展帆時の各積付状態(満載~消費)における舷端水没角の平均値が30.38度であるので、30度を舷端水没角とする。
この説によれば、今は③の舷端が水没する船体傾斜角になっている。
1654 16時54分のモニターでは、気圧が終に1006.8ヘクトパスカルまで降下し、波が高くなってきた。
予想以上に気圧が低くなりつつある。
夜 二週間振りであろうか、久しぶりに飲まずに寝てしまった。
清水管理
みんなが節水に留意し使用量が予定より少なく維持されていて、保有量ラインを上回っている。
<閑話休題>
海王丸では一時期ペットを飼っていた。いや、飼っていたいうと語弊がある。出航直近から、勝手に船にやってきて住みついたのだ。みんなのマスコットだった。
誰が付けたのかその謂われは知らないが、アラキ君と名付けられた伝書バトは、夜は後部甲板の風に当たらないフードの奥でちゃっかり寝て、そこに用意される米粒と真水で機嫌良く暮らしていた。
昼間は甲板を散歩したり、海の上を運動がてら飛んでいたりして、みんなと仲良く2週間ほど過ごしていたのだが、ある日姿が見えなくなった。
船長情報によれば、10km先に四日市行きの船舶が航行していた時に、それに乗り換え帰国したらしい。
朝の食事
たまには米粒以外も食べたい。散歩を兼ね御馳走をさがす
大海原で運動。こんな感じで飛び立ったのだろう
船長より、以下のメッセージがあった。
本日は荒天航海だった。残念ながら一過性の低気圧による悪天候ではなく、本船は北の低気圧と南の高気圧に挟まれた海域に位置しており、この両者の勢力が簡単に崩れないため、明日一杯この悪天候への厳重な注意が必要。
本日の航海概要と気象概況
気象概況
①今晩から未明にかけて前線を通過する。前線通過時が今回の荒天における一番のピークと思われる。
前線通過時の気圧は1004hpa程度まで下降する。これまでの南風に加えて、うねりが発達するので厳重な注意が必要。従って、不測の事態に備えるため、機関部は暖気基準行う。
②明日は時間とともに等圧線がやや緩んでくる。劇的には改善されないが、徐々におさまる傾向となってくる。前線通過後、風はゆっくりと西風へと順展するはず。それに合わせて、本船の針路も南成分を持たせてESEへ針路を向ける。
③明後日(4/26)の天気図によれば、等圧線が密集していた海域を抜け、やや緩んだ様子になる。
26日は基本的に西風(追い手)となるので、船体傾斜よりはむしろ、船体動揺に注意が移る。昨日から時化始めている海面なので、うねりを伴っている海面に本船が同調すると本船はゆっくりと大きなローリングを始める。
大きな影響を避けるべく、26日もESEへ針路をとって高気圧へ近づいていくつもり。
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