海王丸航海21日目 2010/04/26(月) あと4日で到着!
船長より、30日にはサンフランシスコ湾に入りパイロットを乗せ投錨する、との話があった。
計画よりかなり早いスピードで太平洋を横断したことになる。
サンフランシスコ湾の入り口の海図
天気 曇り
正午時点で、
前日正午からの(直航進路129、距離217マイル、東京からの距離4336,残航681、平均9.33ノット)、
風向W/S、風力6、ヤード(帆桁)右舷開き、
天候曇り、気温12.4、海水温度11.9、気圧1007.0、海面状態荒い
船の位置 北緯38度06分、西経136度40分
時刻改正12分(累計-18時間09分)
0625 6時25分のモニター、
進路が大きく東南に変じてきた。
右舷にやや強い風を受けており、波も4mとやや高い。
但し、気圧が少しずつ上昇しているのが分かる。
0640 朝別科
船体傾斜があるため甲板での椰子の実磨きはなし
0830 課業開始
船長より、今後の予定について話があった。
4/29 午前 ランドフォール(陸地発見)できる見込み
4/30 サンフランシスコ湾内に入る。パイロットを乗船させ投錨する
計画よりも4~5日も早い。咸臨丸は横断に38日間かかったが、海王丸は予定通りであれば、25日間でサンフランシスコに到達することになる。常に安全コースをとりつつも、これだけ速いとは!やはり海王丸は優れた帆船だ。
この速さの秘密は何だろう。
日本丸二世よりも後に着工した海王丸二世の設計には、新しい考えが盛り込まれている。
①バーキルの大型化、
②フェザリング式可変ピッチプロペラ、
③静索上部端末のソケット化
①はどちらかというと浸水面積を増大し速力低下を招く、
③は速度には関係ない
その点、②のフェザリング式可変ピッチプロペラは速度向上に大きな効果がある。プロペラ翼をフェザリング状態にすることで、帆走中のプロペラ抵抗を軽減できた。
写真は製造したかもめプロペラ(株)のHPより
もっとも、抵抗をなくす方法で一番よいのは、帆走中は咸臨丸のようにプロペラを海中から揚げてしまえば、プロペラ抵抗はそもそも発生しないのだが・・・・
帆走速力6ノットにおいて、日本丸の固定ピッチプロペラが遊転する場合と比べて5%、遊転しない場合は17%の速力向上が認められているらしい。
今回の帆走の平均速度はまだ正式にはでていないが、9ノット位になるのではないだろうか。当初航海計画の7ノットには海王丸の機能は織り込み済みの数字であるとはいえ、厳しい気象条件の中で、それに耐え、利するような船体構造をもち機能も働いているような気がする。
また、ここまで航海して来て感心したのは、船長の的確なオーダーである。
最新の天気予想図を無線室経由で入手し、先々の予想を日々を見直し、次の指示を出す。気圧配置、気圧の動きを見極め、畳帆、展帆、タック替えを指示し、誤ったことがない。(一度だけ高気圧の中に入った事はあったが・・・)
帆走には何が一番大事なのかが、よくわかる。
安全サイドに行くにも、そうでないのも、帆船の場合風の読みが第一だ。船長が判断し、その指示を航海士が各当直グループに伝え、船長指示を確実に実行させる。
人力で動く帆船は、コミュニケーションの徹底と、チームが一致協力しての同時の共同作業がないと、思った方向に進まない。
その意味では、中々優れた船長だと感心している。
また海王丸は、一定期間実習生を預かり、船員に必要な基礎を実習訓練する機関である。
その点では実習生を動機付けるという意味では、ブリーフィングなどの機会を通じて船員魂、根性、挑戦などをつど分かり易く説明し、また当直現場で実習生の練度状況を確認するなど、教育者としてもなかなか優れている場面に何回かお目にかかった。
0900 ミーティング
専任教官と研修生が、今後の残りの航海で是非ともやりたいこと、希望・要望を話し合う。
ロイヤルへのマスト登り、実習生と交じって同じレベルの訓練など要望が多く出される。
ただ、実習生は今回の航海での訓練が航海士免許を取得するための一里塚であり、評価される。研修生は、彼ら彼女らの勉学の妨げになってはいけない。この辺が、教官としてなかなか難しい判断を求められるところ。
ミーティング終了後は、自主研修となった。
1030 海洋講座
結束(ロープ結び)で、ナポレオンマットの作成方法を実習する。
ロープの取り扱いはどうも苦手だが、マットは何とか出来あがった。ただ、もう一度作れといわれると・・・・・
これがナポレオンマット。自作したのが見つからないので、写真を日本丸通信からお借りした
1200 当直 小生の当番は以下の通り
1200-1300 ウェザーホイル
1300-1400 リーサイド待機
1400-1500 ルックアウト
1500-1600 リーサイド待機、タック替え
1200よりウェザーホイル(風上側の舵輪)を担当している
当直はどの場所も面白いが、特にウェザーホイルは自分が船を動かしている気分になれる
1500のリーサイド待機では、右舷から左舷にタック替えを行った
本日の航海概要と気象概況
<気象概況>
①基本的に気圧変化に大きな変化はないが、等圧線がやや右肩下がりになってきた。従って風は西風から北成分を有している。しかしながら相変わらず等圧線は混んでいるので風力には恵まれた状態が続く。安定した西北西の風、風力は6を中心としたしたものになる。
②昨日までの南風に変わり、西風が暫く続くと、うねりも発達してくる。今夕から左舷傾斜が始まったが、船体傾斜とともに船体動揺がある。
<航海概要>
①本日正午から直航での残航が680マイルとなった。また、本所からの了解も得られたので、以下の通り定め、残り残航を帆走および機走で駆け抜けることとする。
パイロット乗船時刻および錨泊時刻は残りの帆走速力にて変更がありうる。
4月29日午前 ランドフォール
4月29日16時 畳帆および機走開始
4月30日08時 パイロット乗船
4月30日10時 サンフランシスコ湾内に錨泊
本船は残航、気象状況、本所との連絡調整、種々の事柄を経て、4/30にサンフランシスコ湾内へ錨泊をすべく、行動計画・事務手続きを進めていくことを決定した。
しかしながら。まだ調整中や気象状況によって大きく変わる可能性もあることを考慮し、各部各様での準備を進めていく。
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