三吉慎蔵の写真

今日は三吉慎蔵の祥月命日。

明治34年(1901)2月16日、長府で没す。享年71歳。

幕末史の中ではマイナーな人物だが、最近驚いたことがある。

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宮内庁三の丸尚蔵館では、明治十二年 明治天皇御下命「人物写真帖」と題して、1月12日より3月10日までの予定で、明治天皇がお手元に置かれたアルバムを展示している。

このアルバムの作成は、明治天皇が、明治12年(1879)11月19日に宮内卿徳大寺実則を通じて諸官省に、奉任官以上および奉任官に準じる御用掛の写真を募集する旨の通達を出されたことに始まる。

39冊のアルバムには、諸官省の高等官ら4531人が収められている。

展示会の図録には、アルバムから写真を外せないため氏名が不明が1名いるが、その1名を除いた4530名の一覧リストも載っている。

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三吉慎蔵も、明治12年には奉任官であり、写真を撮影したとの記述が慎蔵日記にある。

明治12年12月14日の条に、

「一聖上思召ヲ以テ奉任官以上於印刷局写真為御取相成御手元ヘ被差置候旨宮内省ヨリ達ニ付此日同所ニテ写真致候事」

とある。

アルバム作成のため、写真撮影は大蔵省印刷局にて、まず宮内省関係者の撮影が12月10日より14日までになされ、1日10人前後で、計52名の日割りがなされていた。

日記から、慎蔵は最後の14日の撮影だったのが分かる。

展示会に合わせて発行されている図録には、アルバムに収められた4351名の中から選ばれた、373名の写真が載っている。

373名は、以下の15の分野、

1)皇族、2)大臣・参議、3)華族、4)天皇側近、5)財政制度確立、6)社会基盤整備・産業発展、7)外交、8)地方の発展、9)文化・教育、10)法制・法曹、11)医学、12)陸軍、13)海軍、14)神官・僧侶、15)幕末維新に活躍した人々、

に分類されている。

最後の、15)幕末維新に活躍した人々、に収められた9名の中に、三吉慎蔵が入っている。

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他の8名は、勝海舟山岡鉄舟大久保一翁中島信行板垣退助、関義臣、松平太郎、安藤太郎。

このなかでは慎蔵だけが明治12年には官位がまだない。

なぜ慎蔵が選ばれているのか、幕末史のなかではマイナーなだけに僕にとっては意外であり驚きでもあった。

図録の説明には、慎蔵の年齢は50歳となっている。

撮影した明治12年12月14日は数えで49歳なのだが、翌年1月1日に数えで50歳になる。

アルバム作成の計画では、翌年まで撮影しアルバムを完成する計画なので、アルバム完成年のときの年齢としたらしい。

確認すると、12月10日から14日までに撮影した同じ宮内省関係者の年齢もアルバム完成の年に年齢を合わせている。

図録に慎蔵が入っている理由は不明なのだが、

長府出身者としては、毛利元敏、乃木希典が載っている。二人は共に慎蔵とは関わりが深い。

「長府名勝旧宅址記」には、

「三吉慎蔵

俸禄六十石 住宅南ノ浜後江下ニト居新築ス

今枝流師範小坂土佐九郎ノ二男ニシテ三吉十蔵ノ養子トナル、剣槍ノ術ニ達ス

御目付役、御側用人ヲ勤ム、維新後ヨリ毛利家令トナリ枢要ノ家務ニ参与シ功績最モ多シトス」

とある。

長府毛利家の家務については、長府出身者が定期的に集まり協議して決める場面も多く、乃木希典もその一人だった。

慎蔵の写真の説明文には、

「龍馬の寺田屋遭難事件で同宿。共に難を逃れる。龍馬の死後、妻の龍を長府の自宅に庇護。」

とある。

図録の同じページに、中島信行や関義臣を載せているので、その延長線上で選んでしまったのだろうか・・・・

また皇族には、写真を撮影したときに慎蔵が御付として仕えていた北白川宮能久親王がいるが、その関係で選ばれたのだろうか。

孰れにしろ、「幕末維新に活躍した人々」に載せるべき候補者が他に多くいる中で、マイナーな慎蔵を選んだ理由を一度学芸員に確認したいと思っている。

「三吉」の読み方で、残念なことがある。

「みよし」ではなく「みつよし」と読んで、図録の一覧リストに入れている。

学芸員に確認すると、アルバムの写真には氏名が漢字表記されているが、読みは独自に行ったとのこと。

通常、図録の間違いは、訂正の紙片を図録に入れるのだが、今回は予定はないとの付け加えもあった。

五十音順にリストされて、氏名検索するとヒットしないため、アルバムには載っていないのかと勘違いしてしまう。

このような例は、独自の読みをしたため、まだ他にもありそうだが・・・・

また、氏名の読み方を間違えていることから、学芸員は慎蔵について詳しいとは思えないので、僕的には、ますます、図録に乗せた理由が分からなくなっている。

今回の展示は、古写真研究家には喜ばしいことだ。

まさか、明治12年に高官たちの写真が4531名も残っているとは一般に知れてはいなかった。

もちろん中には従来よりよく知られていた写真も多いけれども、全くの未知の写真も多い。

たとえば、柴五郎などは陸軍少尉の21歳の写真がある。

慎蔵の写真も初見の写真だった。

学芸員に確認したところ、これは確定ではないのだけれども、これからの企画だが、

1)子孫の方には写真の複写を提供できるようにしたい

2)全写真の載った出版を考えたい

とのこと。

研究のため、是非、実現していただきたいものだ。

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