夏の終わりの8月30日に、神戸海軍操練所150年を記念して式典が行われたので記録しておく。
主催は、咸臨丸子孫の会。
150年前に神戸に海軍操練所が開設され、1年で廃止されるに至ったあらましは以下の通り。
勝海舟は、文久2年(1862)閏8月17日、破約攘夷を決行しようという情勢の下で、軍艦奉行並に任命され、
その立場を利して摂海防衛を手掛かりに独自の構想に基づく海軍建設を目指す。
幕府と朝廷中枢に自身の海軍論を植え付けようとし、
文久3年(1863)4月23日、将軍家茂を順動丸にて摂海を案内し、海防は海軍によるしかないと説き、神戸に海軍操練所を置く許可を取り付ける。
また25日には、前年に攘夷督促の勅使を勤めた朝廷の有力者・姉小路公知を大坂から兵庫まで順動丸に乗せ、同じように海軍の必要性と攘夷の不可能を説く。
そして27日には私塾「海軍塾」の運営許可も得てしまう。
海舟は、翌元治元年(1864)5月14日、軍艦奉行に昇進する。
同じ月の29日に、幕臣や諸藩の藩士からも訓練生を徴募し、海軍士官の養成所と海軍工廠の機能を併せ持つ海軍操練所が正式に神戸にて開設する。
海舟は、この神戸海軍操練所に2つの大きな構想を託していた。
1つは、「一大共有之海局」、すなわち幕府はもちろん諸藩の船や人材も集め、幕府の「私兵」に留まらない挙国一致の日本の海軍を建設すること。
2つは、日本、朝鮮、中国の「三国合従連衡」、すなわち東アジアの三国が同盟し、西欧諸国に対抗するという構想である。
その要となるのが海軍であり、神戸海軍操練所はその構想の一環であった。
こうして海舟の構想は軌道に乗るかに見えたが、八・一八後の参与会議の解体、禁門の変・下関戦争での長州攘夷派の壊滅などを経て、幕権強化派が幕府内部で力を持ち始めると、私塾に攘夷派不逞浪士を養っているとの疑惑もあり、海舟は江戸に召喚され11月10日に軍艦奉行を罷免される。
また神戸海軍操練所も翌慶応元年(1865)3月9日に廃止されるに至る。
この海軍操練所の開設から150年を記念し今回のイベントが計画された。
企画当初は航海訓練所に協力を要請し、帆船「海王丸」の神戸寄港に合わせてデッキ上で式典を行い船内の大教室で紀念講演を行う予定をしていたが、残念ながら原油高騰など経費面で海王丸の神戸寄港が見送りになった。
ドル高円安の影響が思わぬところに現れてきた。
それで急遽、一般社団法人グローバル人材育成推進機構の帆船「みらいへ」を利用することに変更し、
1)デッキ上での式典、2)神戸港体験クルージング、3)関連史跡めぐり、に計画変更した。
「みらいへ」の前身は大阪市が所有していた帆船「あこがれ」、
「神戸海軍操練所 開設150年記念」を舷側に掲示している。
1)記念式典は、
12時15分から、神戸港中突堤 カモメリアに入港した帆船「みらいへ」の船上で行われた。
東京・長崎など遠方から、幕府海軍、水夫の子孫の方々も含め約50名の方が参加された。
咸臨丸子孫の会藤本会長による記念式典の開始宣言
藤本会長と海舟の玄孫・高山みな子さんが挨拶され、海軍操練所の当時の建設の意味と現代的意義、その後の神戸発展へ与えた影響について、また海軍操練所での教育・訓練が現代の若者育成に通じることなどが語られた。そのあと、藤本会長から高山さんへ花束が贈呈される
今回のイベントは、神戸、朝日、読売、毎日、産経、NHKなど 多くのメディアが注目し、熱心に取材していた。
式典の終わりにあたって参加者全員で記念撮影
2)記念航海は、
1時から3時半まで、 通常の神戸港クルージングコースに加え、神戸海軍操錬所跡地を海から眺めるように一部変更して、行われた。
2時間余りの短い航海だが、第一突堤の近くで停船し海から操練所の跡を訪ね、また咸臨丸とほぼ同じ大きさの「みらいへ」の船上で、当時の若者たちが新しい日本を夢見て訓練に励んだ姿を想像したのだった。
第一突堤沖にて総員で登舷礼を行う。
突堤の向こう側に、海軍操練所の敷地が広がっていた。
体験航海では、展帆や縮帆などを体験した。
メインマストに翻る、幕府軍艦旗・中黒長旗
3)関連史跡巡り
下船後は、みなと公園にある海舟の撰になる「海軍営之碑」の見学を経て、海軍操練所跡碑の前で、操練所を建設・運営し挙国一致の日本海軍建設の第一歩を踏み出した方々に対しその功績をたたえ献花を行った。
みなと公園
海舟の直筆といわれる「海軍営之碑」(複製)を見学
海軍操練所跡碑にて
操練所の建設構想を実現させた海舟、それに協力し運営した数多くの先人に献花をし、再度、藤本会長と高山さんによる挨拶のあと、全員で敬礼を行った
最後に、居酒屋にて祝賀パーティ
夕刻の懇親会は、見知らぬ人がいる中でも和気あいあいと、皆さん楽しそうに過ごされていました。
イベントはすべて大成功の裡に無事終わることができました。準備に携わられた方々・参加された皆様に感謝御礼申し上げます。
当日の新聞記事
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