東京宝塚劇場にて本日から、「壬生義士伝」が公演される。
歌劇では小林一三の意思もあり、文芸作品を演じることが多い。
たとえば、坪内逍遥「桐一葉」、樋口一葉「たけくらべ」、
泉鏡花「天守物語」、谷崎潤一郎「春琴抄」、
宮沢賢治「銀河鉄道の夜」、太宰治「グッドバイ」、
山岡荘八「宮本武蔵」、司馬遼太郎「燃えよ剣」、
三島由紀夫「春の雪」、つかこうへい「蒲田行進曲」
などと枚挙にいとまがない。
宝塚歌劇は、様々なジャンルの世界と交流があるが、なかでも歌舞伎の世界との交流が有名かもしれない。
歌舞伎に新風を吹き込んだ人物は坪内逍遥だ。
その作品「桐一葉」は、関が原以後の豊臣家臣の片桐且元と淀君を中心に描く。
それまでの古典歌舞伎、活劇とも違う、新歌舞伎の境地を開く試みだった。いわば、古き皮袋に新酒を盛る試み。
坪内逍遥という人は筋が通った人で、理論を立て、それを実践していく。
たとえば、文芸評論家として「小説神髄」にて芸術としての小説とはどうあるべきかを説き、それを実践し小説家として「当世書生気質」を書く。
またのちにはシェークスピアなどの研究者として舞台芸術を説き、この「桐一葉」を書き上げる。
「桐一葉」は「マクベス」の影響が極めて大きい作品だ。
宝塚歌劇では、「宝塚 義太夫歌舞伎研究会」が昭和27年ころから昭和40年まで続く。
昭和28年から発表会が何回も開催され、歌舞伎の演目が宝塚で演じられてきた。
昭和35年11月の第35回発表会では「壺阪観音霊験記」が演じられ、天津乙女のお里、春日野八千代の沢市の好演で芸術祭奨励賞に輝いている。
坪内逍遥の作品では、原作の「桐一葉」とその続編「沓手鳥孤城落月」とが、宝塚では「淀君」として演じられた。
かように宝塚歌劇と近代文学との関係は、なかなか面白いものがある。
参考:箕野聡子「関西文化に育まれた文学」
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