特別講演会「平家の魅力を神戸から」

先日、掲題の特別講演会を拝聴してきた。お目当ては、ドナルド・キーン氏の記念講演「平家と日本文学」と上原まりさんの「筑前琵琶演奏」
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ドナルド・キーン氏は、平家物語について、以下の主旨の講演をされた。 「歴史書」としては現代の歴史研究とは程遠い。登場人物の行為または言葉の出所がなにも書かれていない。 また、平家物語の戦争の描写は、多くの敵を殺す主人公を礼賛する叙事詩とは根本的に異なるため、「叙事詩」ともいえない。 要するに平家物語は「物語」という特別なジャンルに属する。 源氏物語は人と人との関係を描くが、平家物語は人と人との関係ではなく、戦争文学であり、事実・エピソードを書いている。人物は物語の中で突然出現する。出生からは語られない。義経も、ヒーロだが人物像は曖昧に描かれている。 言葉は大和言葉と中国の言葉で構成され書かれている。当時の日本の読者は中国の歴史をよく知っており、理解できた。 また意味は分らなくとも母音を伸ばし子音をはっきりすると言葉が響く。音楽的な言葉の効果があり、琵琶に合う。 敦盛と熊谷直実、一谷での義経の工夫、後白河と建礼門院の対話など、劇的な場面が多く描かれ、劇的であるがゆえに何回も脚色されて、謡曲浄瑠璃、歌舞伎の題材になった。平家物語の文章に従うが、場合によって相当離れるものもある。歪曲されても平家物語が新しい文学や演劇の源泉になりえた。 平家物語の成立時期は不明であるが、世界の戦争文学の中でも高い地位を占めている。 上原まりさんの、筑前琵琶で語る「平家物語」は、奈良に住んでいた10数年前にも拝聴したことがあるが、素晴らしい演奏と歌(語り)であった。 上原さんは、「平家物語」の演奏をライフワークとしており、八百年前に生きた人々の考えは今の人の考えとあまり変わりがないように思える。死と背中合わせの中で生きた、エネルギーに満ちた人々の物語を読んで、自分の成長や生き方に大きな影響を与えられた、と語っておられた。 平家物語で思い出すのは、日本各地にある平家落人の伝承。最後の戦いの壇ノ浦では40数名の女性が生き残ったそうだが、それ以外に戦いに破れ各地に落ち延びた平家ゆかりの人たちが多くいた。 その一つに、失敗事業として名高い奈良大滝ダムの近くの高原に、平家落ち武者の伝承がある。 余談だが、この高原の湧き水は清く、ここで作られる素麺はおそらく日本一だと思う。一度食べると他の素麺は食べれなくなる。 日本海側にも落人の部落はある。 昨日、城崎を訪れてきたが、城崎から竹野の間の海岸の村にも平家の落人の伝承があった。ここの海岸は山からの斜面が急で崖に近い状態で海に入っている。海に臨むわずかな谷のような場所にまことに小さな漁村がある。昔は陸上からの道もなく、海からしか近づけなかったに違いない。
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